【杜氏】について正しく知ろう!日本酒造りのプロフェッショナル-職人技に迫る!

「杜氏(とうじ)」ってたまに聞くけど、どう意味なの?? 

お酒を飲んでいると、こんな👆疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

杜氏(とうじ)とは??一言で答えると、

酒蔵の最高製造責任者、つまり酒造りのリーダーです。

美味しい日本酒編集部

みなさんこんにちは!「美味しい日本酒」編集部です。今回は杜氏特集!世界一わかりやすく杜氏の全てを説明していきます!

杜氏(とうじ)とは?

杜氏の仕事・役割

酒造りのリーダーである杜氏は、原料選びから、日本酒の製造工程、貯蔵、熟成まで、全ての製造工程に目を配り、責任を持ちます。

酒造り全てに精通している必要があり、酒のプロフェッショナルといえます。

また、酒造りには、杜氏をリーダーとして、その下に様々な役職があります。

下記は酒造りの役職表です。

  1. 杜氏 👉 蔵の管理・帳簿管理・全ての工程の責任者
  2. 頭 👉 杜氏からの伝令伝達・蔵人の指揮など
  3. 麹師 👉 麹の製造工程の責任者
  4. 酛師 👉 酛(酵母)の製造工程の責任者
  5. 道具廻し 👉道具の準備全般・洗浄・米洗いなど
  6. 釜屋 👉甑(こしき)蒸し・釜焚きつけ・仕込み水汲みなど
  7. 助手 👉麹師、酛師の助手
  8. 一般蔵人 👉雑用全般

このように様々な役職がありますが、小さな蔵では、いろいろな役職を兼任することがよくあります。

また、全国にはいくつかの杜氏集団があり、上記の役職は、流派によっても異なってきます。

杜氏(とうじ)の名前の由来

杜氏という名前の由来は、もともと家事全般を仕切る主婦を意味する「刀自(とうじ)」でした。

つまり、酒造りは女性の役目だったのです。

しかし、お酒の需要が徐々に増え、生産量が増えていく中で、力作業が多くなり、酒造りは男の仕事へと変わっていきました。

⬇︎⬇︎⬇︎女人禁制の流れへ

その後、酒造りの現場では、お酒がいつでも手に入ることから、風紀を保つため、女人禁制(女性は酒造りの場に入ってはいけない)とすることが一般化していきました。※今は違います。

MEMO
酒造りは女性の仕事から男性の仕事へと変わり、「とじ」という音だけが受け継がれ、「刀自」➡︎「杜氏」となった。

多様化する杜氏の働き方➡︎三つのスタイル

ここまで、杜氏の役割・仕事内容についてお話してきました。

伝統的な杜氏は、杜氏集団を作り、酒造りのシーズンだけ酒蔵に行き、独立した形でお酒を作ります。※酒蔵が冬に杜氏を雇用するような形

 

しかし現在は、世の中の働き方の多様化と同様に、杜氏の働き方も多様化してきています。現在は、大まかに3つの杜氏のスタイルがあります。

 

1.短期労働型-杜氏

昔ながらの伝統的な杜氏は、春から秋までの間は米を栽培し、秋から冬の酒造りシーズンになると、仲間を引き連れて、出稼ぎで酒造りを行います。

リーダーである杜氏は「おやっさん(親父さん)」と呼ばれ、集団の親のような役割も担い、蔵人たちの人間関係や体調管理まで目を配り、冬の酒造りが終わるまで全責任を負います。

こういった杜氏は、出身地ごとに「杜氏集団」と呼ばれるグループに所属し、そこで技術の向上と伝承を行っています。

2.社員型-杜氏

杜氏の後継者不足により、蔵元では、杜氏を正社員として年間雇用する動きが広がっています。

また、技術の進歩により、一年を通して酒造りを行える蔵も増えてきており、新しいタイプの杜氏による酒造りが注目されています。

このスタイルは大手酒造メーカーに多く見られます。大手酒造は工場生産型で酒造りをコンピューターによるオートメーションで行っていることが多いため、杜氏も、温度や湿度などの数値をコンピューターで監視するような形で働いています。

3.蔵元杜氏、オーナー型杜氏

オーナー型杜氏とは、「酒蔵のオーナー」自らが杜氏の役割を担い、酒造りを行うことをいいます。

獺祭の蔵元「旭酒造」は、杜氏という職人文化を無くし、自ら酒造りを行ったことで有名になりましたね。

オーナー型杜氏によって、より自由に、新たな発想をもって酒造りを行えるので、日本酒の多様化に繋がりました。

美味しい日本酒編集部

酒造りも時代の流れと共に進化し続けています! 

さてここから、今注目されている蔵元杜氏(オーナー型杜氏)の一年間を追っていきたいと思います。

蔵元杜氏の一年間に密着

  • 10月-晩秋
    蔵入り

    冬手前の晩秋を迎え、杜氏と蔵人が集まることを「蔵入り」といいます。

     

    神主さんを迎え、醸造安全祈願をする蔵元も多く、「どうか今年もいいお酒ができますように!!」という気持ちを込めて祈ります。

    ただ、「今年もまた始まるのかぁ〜」と思ってしまうことも。。それだけ酒造りは大変です。

  • 10月-初洗い
    酒造りスタート

    画像引用元:八海山公式サイト

    酒造りの最初の工程を「初洗い」と呼びます。

     

    「お米を洗うだけでしょ??」と思ってしまいますが、侮ってはいけません。
    原料の酒米がどれだけ水を吸うかは、酒造りにとって重要なポイントです。「今年はどうかな??」とドキドキしながら行う作業なんです。

  • 楽しみ
    同業者と情報交換

    酒造りのシーズンが始まると、蔵元を離れられないのが、蔵元杜氏たち。

    そんな彼らの楽しみは、全国の同業者との情報交換なのです!

     

    酒造りの調子や、新しい機材などの情報を交換し、お互いを励まし合います。

  • 1月-緊張感MAX
    大吟醸造りスタート

    1月〜2月に大吟醸酒の製造が始まります。
    酒米をギリギリまで削って造る大吟醸酒は、全ての工程を慎重に行わなければなりません。

     

    失敗はできないので、緊張感はMAX!

    品評会に出すお酒もここで作られるので、経営にも大きく響いてきます。

  • 3月,4月酒造りの最終局面
    甑倒し

     春先にくる酒造りの最終局面「甑(こしき)倒し」。

    甑(こしき)とは、麹米や、掛米を蒸す道具のことをいいます。

    それを倒すということは、もう麹造りは行わないということ。

    つまり、麹の管理が終わり、ようやくゆっくり寝られるようになるんです♩

  • 4月,5月やっと終わった!
    酒造り終了!!

    甑倒しから1ヶ月ほどで、残った麹や酒米を使い、全てのお酒を造りきることを、「皆造(かいぞう)」といます。

     

    これでようやく、数ヶ月に渡って続いた酒造りが終了し、宴会!
    宴会は深夜まで続きます。

  • 6月〜10月嬉しい瞬間
    日本酒イベント

    酒造りが終わると、全国で日本酒イベントが開かれます。

     

    蔵元杜氏自ら出向き、日本酒ファンとの交流を楽しんだり、作ったお酒がシビアに評価される「日本酒コンテスト」の結果に一喜一憂したりします。

  • 6月〜10月営業マンに
    国内・海外に営業に出向く

    冬は酒造り、春と夏は、蔵の経営を担う酒の営業マンであれ!

     

    世界中で日本酒が注目される中で、海外へ商談に行くのも未来のための大きな仕事。
    こうした海外での見聞が、また次の酒造りに生かされてくるのです。

  • 6月〜10月-酒米チェック
    酒米の様子を見に行く

    酒造りが終わっても、年中気にかけているのが、「酒米の出来映え」!
    特に、地元の酒米を使う酒蔵は、田植えを手伝ったりと、酒米のコンディションに気を配ります。

  •  

  • 9月-機材購入!!
    設備投資は大切

    精米機や絞り機など、毎年機材のメンテナンスが必要です。

     

    杜氏にとって、憧れの機材を購入できることは嬉しいもの。
    ただ、一つの機材に数千万円かかるので、毎年頭を悩ませます。

  • 8~9月
    製造計画

    本格的な製造に入る前に、来期の製造計画を立てます。

     

    酒米の手配から、代金の支払い、夏休みの宿題のように、溜めると大変な思いをします。。。

  • 酒造りスタート

    また今年も、酒造りがスタートします。

    こうして酒造りは毎年のように続きます。

さぁここまで、蔵元杜氏の一年を紹介してきました。

意外と杜氏は忙しいです。経営から酒造りまで、全てに責任を持って、蔵を運営していかなければなりません。

全国の杜氏集団

全国にはさまざまな杜氏集団があり、各流派によって独自の技術があります。

以下が三大杜氏と呼ばれる大きな杜氏集団です。

三大杜氏
  1. 南部杜氏(岩手県)
    全国最多の杜氏が在籍する杜氏集団。
    最盛期の昭和40年には、3200名ほどが加盟していたと言われています。
  2. 越後杜氏(新潟県)
    在籍する杜氏が南部杜氏の次に多い杜氏集団。
    新潟の盛んな酒造業を支える他、全国各地の都道府県で銘酒を造っています。
  3. 丹波杜氏(兵庫県)
    江戸時代から日本酒の一大生産地に数えられていた、灘のお酒を支えていた杜氏集団です。

他にも全国各地に、杜氏集団が存在します。

東北の杜氏集団

東北 杜氏集団

  1. 津軽杜氏(青森)
    青森の地元の味を守る貴重な存在
  2. 山内杜氏(秋田)
    南部杜氏に次ぐ東北を代表する杜氏集団
  3. 南部杜氏(岩手)
    杜氏数は全国最多で、三代杜氏に数えられる
  4. 会津杜氏(福島)
    福島を代表する地元杜氏

中部地方の杜氏集団

  1. 越後杜氏(新潟)
    全国各地で活躍する新潟の杜氏、三大杜氏の一つ
  2. 能登杜氏(石川)
    アジアでも活躍した能登杜氏
  3. 大野杜氏(福井)
    精米士でも有名
  4. 越前糠杜氏(福井)
    過去には200名以上の杜氏が活躍

近畿地方の杜氏集団

  1. 丹後杜氏(京都)
    京都では貴重な地元杜氏集団
  2. 丹波杜氏(兵庫)
    日本酒の一大生産地「灘」で酒を醸して250年、業界の中心的存在
  3. 南但杜氏(兵庫)
    自然豊かな兵庫県の南但地方の杜氏
  4. 但馬杜氏(兵庫)
    丹波の次に大きい、兵庫を支える杜氏

中国地方の杜氏集団

  1. 広島杜氏(広島)
    軟水醸造を発見した三浦氏が築いた杜氏集団
  2. 石見杜氏(島根)
    沿岸沿いに拠点を構える杜氏集団
  3. 出雲杜氏(島根)
    中国地方で代表的な杜氏
  4. 大津杜氏(山口)
    地元山口を支える杜氏

四国・九州地方の杜氏集団

  1. 土佐杜氏(高知)
    高知の三杜氏が統合
  2. 越智杜氏(愛媛)
    四国を代表する杜氏
  3. 九州の杜氏
    九州の酒造りは、九州に拠点を置く杜氏が中心

いかがだったでしょうか?

酒造りの最高責任者である「杜氏」。

その年にいいお酒ができるかどうかは、「杜氏」の腕によるところが大きいのが事実。

杜氏は、そんな大きなプレッシャーを背負いながら、お酒を毎年のように作り続けています。

 

お酒を飲む時に、どんな杜氏がどんな思いで作ったのかを知ることで、日本酒の味わいも大きく変わってきますよ!

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