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お酒を飲んでいると、こんな👆疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?
杜氏(とうじ)とは??一言で答えると、
酒蔵の最高製造責任者、つまり酒造りのリーダーです。
美味しい日本酒編集部
Contents
杜氏(とうじ)とは?
杜氏の仕事・役割
酒造りのリーダーである杜氏は、原料選びから、日本酒の製造工程、貯蔵、熟成まで、全ての製造工程に目を配り、責任を持ちます。
酒造り全てに精通している必要があり、酒のプロフェッショナルといえます。
また、酒造りには、杜氏をリーダーとして、その下に様々な役職があります。
下記は酒造りの役職表です。
- 杜氏 👉 蔵の管理・帳簿管理・全ての工程の責任者
- 頭 👉 杜氏からの伝令伝達・蔵人の指揮など
- 麹師 👉 麹の製造工程の責任者
- 酛師 👉 酛(酵母)の製造工程の責任者
- 道具廻し 👉道具の準備全般・洗浄・米洗いなど
- 釜屋 👉甑(こしき)蒸し・釜焚きつけ・仕込み水汲みなど
- 助手 👉麹師、酛師の助手
- 一般蔵人 👉雑用全般
このように様々な役職がありますが、小さな蔵では、いろいろな役職を兼任することがよくあります。
また、全国にはいくつかの杜氏集団があり、上記の役職は、流派によっても異なってきます。
杜氏(とうじ)の名前の由来
杜氏という名前の由来は、もともと家事全般を仕切る主婦を意味する「刀自(とうじ)」でした。
つまり、酒造りは女性の役目だったのです。
しかし、お酒の需要が徐々に増え、生産量が増えていく中で、力作業が多くなり、酒造りは男の仕事へと変わっていきました。
⬇︎⬇︎⬇︎女人禁制の流れへ
その後、酒造りの現場では、お酒がいつでも手に入ることから、風紀を保つため、女人禁制(女性は酒造りの場に入ってはいけない)とすることが一般化していきました。※今は違います。
多様化する杜氏の働き方➡︎三つのスタイル
ここまで、杜氏の役割・仕事内容についてお話してきました。
伝統的な杜氏は、杜氏集団を作り、酒造りのシーズンだけ酒蔵に行き、独立した形でお酒を作ります。※酒蔵が冬に杜氏を雇用するような形
しかし現在は、世の中の働き方の多様化と同様に、杜氏の働き方も多様化してきています。現在は、大まかに3つの杜氏のスタイルがあります。
1.短期労働型-杜氏
昔ながらの伝統的な杜氏は、春から秋までの間は米を栽培し、秋から冬の酒造りシーズンになると、仲間を引き連れて、出稼ぎで酒造りを行います。
リーダーである杜氏は「おやっさん(親父さん)」と呼ばれ、集団の親のような役割も担い、蔵人たちの人間関係や体調管理まで目を配り、冬の酒造りが終わるまで全責任を負います。
こういった杜氏は、出身地ごとに「杜氏集団」と呼ばれるグループに所属し、そこで技術の向上と伝承を行っています。
2.社員型-杜氏
杜氏の後継者不足により、蔵元では、杜氏を正社員として年間雇用する動きが広がっています。
また、技術の進歩により、一年を通して酒造りを行える蔵も増えてきており、新しいタイプの杜氏による酒造りが注目されています。
このスタイルは大手酒造メーカーに多く見られます。大手酒造は工場生産型で酒造りをコンピューターによるオートメーションで行っていることが多いため、杜氏も、温度や湿度などの数値をコンピューターで監視するような形で働いています。
3.蔵元杜氏、オーナー型杜氏
オーナー型杜氏とは、「酒蔵のオーナー」自らが杜氏の役割を担い、酒造りを行うことをいいます。
獺祭の蔵元「旭酒造」は、杜氏という職人文化を無くし、自ら酒造りを行ったことで有名になりましたね。
オーナー型杜氏によって、より自由に、新たな発想をもって酒造りを行えるので、日本酒の多様化に繋がりました。
美味しい日本酒編集部
さてここから、今注目されている蔵元杜氏(オーナー型杜氏)の一年間を追っていきたいと思います。
蔵元杜氏の一年間に密着
- 10月-晩秋蔵入り
冬手前の晩秋を迎え、杜氏と蔵人が集まることを「蔵入り」といいます。
神主さんを迎え、醸造安全祈願をする蔵元も多く、「どうか今年もいいお酒ができますように!!」という気持ちを込めて祈ります。
ただ、「今年もまた始まるのかぁ〜」と思ってしまうことも。。それだけ酒造りは大変です。
- 10月-初洗い酒造りスタート
画像引用元:八海山公式サイト
酒造りの最初の工程を「初洗い」と呼びます。
「お米を洗うだけでしょ??」と思ってしまいますが、侮ってはいけません。
原料の酒米がどれだけ水を吸うかは、酒造りにとって重要なポイントです。「今年はどうかな??」とドキドキしながら行う作業なんです。 - 楽しみ同業者と情報交換
酒造りのシーズンが始まると、蔵元を離れられないのが、蔵元杜氏たち。
そんな彼らの楽しみは、全国の同業者との情報交換なのです!
酒造りの調子や、新しい機材などの情報を交換し、お互いを励まし合います。
- 1月-緊張感MAX大吟醸造りスタート
1月〜2月に大吟醸酒の製造が始まります。
酒米をギリギリまで削って造る大吟醸酒は、全ての工程を慎重に行わなければなりません。失敗はできないので、緊張感はMAX!
品評会に出すお酒もここで作られるので、経営にも大きく響いてきます。
- 3月,4月酒造りの最終局面甑倒し
春先にくる酒造りの最終局面「甑(こしき)倒し」。
甑(こしき)とは、麹米や、掛米を蒸す道具のことをいいます。
それを倒すということは、もう麹造りは行わないということ。
つまり、麹の管理が終わり、ようやくゆっくり寝られるようになるんです♩
- 4月,5月やっと終わった!酒造り終了!!
甑倒しから1ヶ月ほどで、残った麹や酒米を使い、全てのお酒を造りきることを、「皆造(かいぞう)」といます。
これでようやく、数ヶ月に渡って続いた酒造りが終了し、宴会!
宴会は深夜まで続きます。 - 6月〜10月嬉しい瞬間日本酒イベント
酒造りが終わると、全国で日本酒イベントが開かれます。
蔵元杜氏自ら出向き、日本酒ファンとの交流を楽しんだり、作ったお酒がシビアに評価される「日本酒コンテスト」の結果に一喜一憂したりします。
- 6月〜10月営業マンに国内・海外に営業に出向く
冬は酒造り、春と夏は、蔵の経営を担う酒の営業マンであれ!
世界中で日本酒が注目される中で、海外へ商談に行くのも未来のための大きな仕事。
こうした海外での見聞が、また次の酒造りに生かされてくるのです。 - 6月〜10月-酒米チェック酒米の様子を見に行く
酒造りが終わっても、年中気にかけているのが、「酒米の出来映え」!
特に、地元の酒米を使う酒蔵は、田植えを手伝ったりと、酒米のコンディションに気を配ります。 - 9月-機材購入!!設備投資は大切
精米機や絞り機など、毎年機材のメンテナンスが必要です。
杜氏にとって、憧れの機材を購入できることは嬉しいもの。
ただ、一つの機材に数千万円かかるので、毎年頭を悩ませます。 - 8~9月製造計画
本格的な製造に入る前に、来期の製造計画を立てます。
酒米の手配から、代金の支払い、夏休みの宿題のように、溜めると大変な思いをします。。。
- 酒造りスタート
また今年も、酒造りがスタートします。
こうして酒造りは毎年のように続きます。
さぁここまで、蔵元杜氏の一年を紹介してきました。
意外と杜氏は忙しいです。経営から酒造りまで、全てに責任を持って、蔵を運営していかなければなりません。
全国の杜氏集団
全国にはさまざまな杜氏集団があり、各流派によって独自の技術があります。
以下が三大杜氏と呼ばれる大きな杜氏集団です。
- 南部杜氏(岩手県)
全国最多の杜氏が在籍する杜氏集団。
最盛期の昭和40年には、3200名ほどが加盟していたと言われています。 - 越後杜氏(新潟県)
在籍する杜氏が南部杜氏の次に多い杜氏集団。
新潟の盛んな酒造業を支える他、全国各地の都道府県で銘酒を造っています。 - 丹波杜氏(兵庫県)
江戸時代から日本酒の一大生産地に数えられていた、灘のお酒を支えていた杜氏集団です。
他にも全国各地に、杜氏集団が存在します。
東北の杜氏集団
- 津軽杜氏(青森)
青森の地元の味を守る貴重な存在 - 山内杜氏(秋田)
南部杜氏に次ぐ東北を代表する杜氏集団 - 南部杜氏(岩手)
杜氏数は全国最多で、三代杜氏に数えられる - 会津杜氏(福島)
福島を代表する地元杜氏
中部地方の杜氏集団
- 越後杜氏(新潟)
全国各地で活躍する新潟の杜氏、三大杜氏の一つ - 能登杜氏(石川)
アジアでも活躍した能登杜氏 - 大野杜氏(福井)
精米士でも有名 - 越前糠杜氏(福井)
過去には200名以上の杜氏が活躍
近畿地方の杜氏集団
- 丹後杜氏(京都)
京都では貴重な地元杜氏集団 - 丹波杜氏(兵庫)
日本酒の一大生産地「灘」で酒を醸して250年、業界の中心的存在 - 南但杜氏(兵庫)
自然豊かな兵庫県の南但地方の杜氏 - 但馬杜氏(兵庫)
丹波の次に大きい、兵庫を支える杜氏
中国地方の杜氏集団
- 広島杜氏(広島)
軟水醸造を発見した三浦氏が築いた杜氏集団 - 石見杜氏(島根)
沿岸沿いに拠点を構える杜氏集団 - 出雲杜氏(島根)
中国地方で代表的な杜氏 - 大津杜氏(山口)
地元山口を支える杜氏
四国・九州地方の杜氏集団
- 土佐杜氏(高知)
高知の三杜氏が統合 - 越智杜氏(愛媛)
四国を代表する杜氏 - 九州の杜氏
九州の酒造りは、九州に拠点を置く杜氏が中心
いかがだったでしょうか?
酒造りの最高責任者である「杜氏」。
その年にいいお酒ができるかどうかは、「杜氏」の腕によるところが大きいのが事実。
杜氏は、そんな大きなプレッシャーを背負いながら、お酒を毎年のように作り続けています。
お酒を飲む時に、どんな杜氏がどんな思いで作ったのかを知ることで、日本酒の味わいも大きく変わってきますよ!
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